糖尿病網膜症
糖尿病には合併症がいくつもありますが、糖尿病腎症、糖尿病神経症とともに三大合併症と呼ばれているのが糖尿病網膜症です。
糖尿病の影響で網膜の組織がダメージを受け、視力が低下します。糖尿病は、血糖値の上昇が続く生活習慣病で、毛細血管に大きな負担をかけ続けます。目の網膜には細かい毛細血管が縦横に走っているため、高血糖の悪影響を受けやすい場所であり、血管が詰まる・出血するなどを起こしやすいのです。また、詰まって血管が機能しなくなると酸素や栄養素が不足するため、新生血管というもろい血管を作ってより出血を起こしやすくなり、視力の大幅な低下を招きます。
糖尿病と診断されたら病期によりますが、1~6か月に一度は眼科の検診を受ける必要があり、早期治療を受ければ糖尿病網膜症の進行を止めることができます。ただし、眼科検診をドロップアウトしてしまう患者様も少なからずおられますので、日本の中途失明原因では現在でも糖尿病網膜症は上位にあります。
糖尿病網膜症は、進行状況によって3段階の病期に分けられ、治療法も異なります。なお、視力に大きな影響を与える「糖尿病黄斑浮腫」は、3段階すべてで現れる可能性があります。
血糖コントロールで改善できることもありますが、自覚症状がほとんどないため、定期的な眼科検診を受けることが重要です。網膜の血管壁が盛り上がる血管瘤、小さな出血を起こしている程度であり、血管から血液成分が漏れている状態です。
網膜の血管が広範囲に閉塞している状態です。酸素や栄養素が行きわたらなくなるため、新生血管というもろく破れやすい血管ができ始めます。かすみ目などの自覚症状があることもありますが、全く症状が現れないケースもあります。この時期にできるだけ早く適切な治療を受けることで進行を止める必要があります。
新生血管が破れて硝子体出血を起こし、飛蚊症や急激な視力低下を起こすことがあります。
線維状の膜である増殖組織が網膜を引っ張って網膜剥離を起こすと、視野を大きく欠損させてしまうこともあります。視力を少しでも残すために、できるだけ早く手術などを受ける必要がある状態です。
網膜中心部には、黄斑というものを注視する際に用いられる場所があります。糖尿病黄斑浮腫は糖尿病の高血糖によって黄斑がむくむ病気で、視界がぼやける、注視するものがゆがむ、暗く見えるなどが起こります。糖尿病の合併症以外でも黄斑浮腫が起こることがあります。特に、ぶどう膜炎や網膜静脈閉塞症などがあると網膜の黄斑のむくみを起こすリスクがあります。むくみが続くと黄斑の神経が障害を受けて永続的な視力障害や視野障害が起こります。
糖尿病の診断を受けたら、ドロップアウトすることなく、必ず眼科検診を受けてください。初期に発見できれば食事や運動などによる血糖コントロールで進行を抑えることも可能です。それ以上に進行してしまった場合は、レーザーによる網膜光凝固術で新生血管の発生や活動性を抑制します。糖尿病黄斑浮腫に対しましては抗VEGF薬硝子体注射やステロイドテノン嚢下注射やレーザー治療を施行します。さらに進行して硝子体出血や網膜剥離、黄斑部の牽引などが確認された場合には、硝子体手術が必要になります。網膜・硝子体の状態を分析しながら、それぞれの患者様に応じたオーダーメイドな治療を施行致します。不明な点がございましたら、遠慮なくご相談ください。